長野産地レポート「JAながのみゆき」シャクヤク

LIFFTでは、「Farm to Vase」をコンセプトに全国各地の提携農園から新鮮なお花を皆さまのお手元へお届けしています。


お花のある暮らしを届けるLIFFTがずっと大切にしていること。それは「生産者とのつながり」です。LIFFTのスタッフは毎月のように全国各地の農園を直接訪ね、生産者のお話を伺っています。


今回は、「LIFFT定期便」5月号のメイン花材であるシャクヤクを生産されているJAながのみゆき シャクヤク研究会(以下JAながのみゆき)の会長である滝澤英俊さんのお話から、LIFFT Journalでご紹介しきれなかった生産の裏側をお伝えします。

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時代を超えて愛される「シャクヤク」

シャクヤク


優雅で美しい花姿が存在感を放つ、初夏の花シャクヤク。平安時代に日本に伝来したシャクヤクは長年に渡って人々を魅了し、時代を超えて愛され続けてきました。


そんなシャクヤクの開花時期が、一瞬で過ぎてしまうことはご存知ですか?実はシャクヤクが採花できるのは、1種類につき約10日間のみなのです。一輪一輪がとても貴重な花なのですね。「LIFFT定期便」6月号でお届けするシャクヤクも、その僅かな期間に採花しお届けしています。


シャクヤクは咲かない蕾があると敬遠されがちな面もありますが、JAながのみゆきではより確実に開花するよう切り前(採花時の蕾の緩み加減)を厳密に調整しています。品種ごとに丁寧に調整を行うことにより、高い開花率を維持することができているのです。


また、どの生産者も必ず一株にははさみを入れず、どのような咲き方をするのかを観察することでシャクヤクへの理解を深める約束をしているのだそうです。長年生産を続けるプロでも常に学び続ける姿勢には、私たちも学ぶことが多くありますね。



美しさの秘訣は、花が咲くまでの「準備期間」にある

シャクヤクの花


採花の期間が一瞬で過ぎてしまうシャクヤク。そんなシャクヤクが私たちの手元に届くまでには、実はとても長い時間がかかっているのです。


この季節に花屋に立ち寄ると、赤やピンク、白など彩り豊かなシャクヤクを見かけますよね。実はシャクヤクの育種は、種を採ってから流通に乗せるまで20年くらいかかるのだそうです。交配してから種を採って良いものだけを選び取り、切り花に適しているか、また生産性のテストなどを重ね、出荷できる程までに増すのにとても長い時間がかかるのだとか。


その分、良い品種ができたら100年、200年と時を超えて受け継がれていくのだそうです。今月号でお届けしたシャクヤク「夕映」や「氷点」、「春の粧」なども長い年月をかけて生まれ、私たちの手元に届いたと思うと、とても愛おしく思えてきますね。


また、JAながのみゆきでは高品質なシャクヤクを生産するため、普通であれば栽培を始めて3〜4年目で出荷するところを、5年目に初出荷することにしているのだそうです。出荷を遅らせる分、他の産地に比べて収入の無い年が増えるわけですが、立派な株になってから出荷したいというJAながのみゆきのこだわりが詰まっているんです。


そのこだわりは、JAながのみゆきのシャクヤクのボリュームに大きく現れています。他農園のLL規格の大きさのシャクヤクがJAながのみゆきのM規格のものと同じということもあるぐらい、ふわりと大きな花が特徴的です。植えてからすぐには収穫せずに、じっくり育ててから出荷することによって、とても立派で華やかな大輪のシャクヤクが実現しているんですね。


JAながのみゆきのシャクヤクは自然と共に

JAながのみゆき

JAながのみゆきのシャクヤクが美しいもう一つの理由。それは、自然に寄り添い、自然と共にシャクヤクを育てていることにあります。


長野県みゆき地区は、冬になると2m近く雪が降る雪国。なんと4ヶ月近くもの間、雪に覆われるのだそうです。それだけ聞くと花の栽培に向いていないのでは?と思ってしまいますが、雪の下の環境は温度と湿度が一定で、シャクヤクが冬の間の休眠をするに最適なのだとか。


JAながのみゆきのシャクヤクの最大の魅力であるしっかりと締まった茎と力強い大輪の花は、大量の雪の下で快適に休眠し、春にたっぷりの雪解け水を吸って成長したことによって生まれているんですね。雪国の特性を活かして独自の栽培方法を追求しているJAながのみゆきだからこそ、徹底して高品質なシャクヤクをお届けてできているのです。


また、土に関してはJAながのみゆきでは、


  • 植え付けの際にしっかりと畑の土壌を見極めること
  • 有機物の堆肥を使用すること

という2つのこだわりがあります。技術員が畑を巡って条件の悪い畑は見極めるのだそう。水が貯まらないような畑を選んで苗を植え、排水がスムーズにできるよう対策を行なっているのだそうです。また、化成肥料の量が増えると葉っぱに阻害が起きたり根が伸びなくなってしまうこともあるため、有機堆肥を多く使うことにこだわっているそうです。


生産者にとっては春の花

シャクヤクは春の花

花屋からすると初夏の花の印象が強いシャクヤクですが、生産者にとっては春を感じる花だとおっしゃっていたのが今回のインタビューでとても印象的でした。4カ月間雪の下にいたシャクヤクが天に向かってぐんぐん伸び、大輪の花が咲いた時に「花の季節が来たな!」とワクワクするのだそうです。長く暗い冬が明けた後に大きく花開くシャクヤク。私たちの手元に届くまでの長い道のりを知った後に見ると、尚更その生命力に満ち溢れた美しさに感動してしまいますね。


自然環境に大きく左右されるというシャクヤクの栽培。最近は気候変動の関係により大変なことも多いそうですが、いい花はしっかりと評価されるためとてもやりがいがあるのだとか。「シャクヤク」と一口に言っても色合いや光沢、花姿など本当に多種多様な品種が存在します。滝澤さんは様々なニーズに寄り添えるような花を作り、お客様にいろんな種類のシャクヤクを楽しんで欲しいと語ってくれました。


「生きている限り、お客様に次はどんな花が来るのだろうと楽しみにしてもらえるようなシャクヤク作りを続けたい」


笑顔でそう話してくださった滝澤さん。そんな自分の気持ちと畑を、次の世代にも残していきたいと語る姿は希望に溢れ、話を聞いている私たちもその花を届けるという使命を改めて強く実感しました。


今後、JAながのみゆきからどのようなシャクヤクが生み出されるのか、本当に楽しみですね。お家でシャクヤクを飾る際には、ぜひそのシャクヤクが辿った歴史にも想いを馳せてみてください。一輪一輪大切に育てられた逸品のシャクヤクが、きっとみなさんの暮らしをより明るく彩ってくれるはずです。

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